番町皿屋敷 ここは、あの有名な、番町、青山播磨の古屋敷。 古井戸から、きれいなお菊の幽霊が現れるというので、たいへんな評判。 幽霊を見たいと、毎晩、毎晩、押すな押すなの賑わい。 人が集まるのに便乗して、夜焼きそばから、だんご屋、おでん屋までが、店を出すという始末。 さて、ある晩のこと。 見物人は、今か今かと、幽霊を待っておった。 すると、草木も眠る丑三つ時。 青い火が、メラメラメラと、燃えたかと思うと、井戸の中から、スーーッと、お菊の幽霊が現れた。 「いよう、お菊さーん」「まってました。」 「しっ。静かに、静かに、静かに・・・」 みな、耳をそばだてて、お菊の声を待っておる。 「・・・一枚、・・・二枚、・・・三枚」 いつものように、幽霊が、細い震え声で数え始めた。 みんなは、ガタガタと震えながらも、お菊の声に、聞き惚れておると、いつもは九枚で止まるはずが、「・・・十枚、・・・十一枚、・・・十二枚」と、つづけて、やがて、「・・・十八枚。」 そこまで数えて、スーッと、井戸へ消えようとします。 「おっと、お菊さん。まった。」 「今晩は、数がおおございますな。」 「おまけですかい。」 すると幽霊は、寂しく笑って、 「はい。実は風邪ぎみでございますので、明日は、お休みです。」 な押すな:非常拥挤,杂沓。 便乗:就便搭乘;乘机。 始末:(事情的)始末,原委;情形。 見物人:值得看的人。 今か今かと: メラメラ:(火焰)熊熊燃烧。 そばだてる:倚,侧。 ガタガタ:摇晃;哆哆嗦嗦地;发抖。 聞き惚れる:听得出神,听得入迷。 おまけ:(作为赠品)另外奉送;另外附加。 風邪ぎみ:有点伤风,有点感冒。 番町鬼宅 这里是有名的番町(地名)、青山播磨(人名)的旧居。 因为有美丽的阿菊的幽灵出现,所以很有名气。 这里总是聚集很多人,所以各种小吃摊也都借机摆出来。从炒面摊儿,米粉团摊儿,到关东煮摊儿都有。 且说,一天晚上。 参观的人迫不及待的等着幽灵的出现。 深更半夜的时候。 蓝色的火焰熊熊的燃烧起来,立刻阿菊的幽灵从井里嗖地出现了。 “哎呀,阿菊!” “我们在等你啊。” “嘘。安静,安静,安静……” 大家都竖起耳朵等待阿菊的声音。 “……一个,……两个,……三个” 和平常一样,幽灵用微细颤抖的声音开始数了。 大家一边哆哆嗦嗦地颤抖着一边入迷地听阿菊的声音。 平时都是数到九就停的,可是今天却继续数了下去:“……十个,……十一个,……十二个”,一会儿当她数到:“……十八个”的时候,“嗖”地要消失到井里。 “喂,阿菊,等等!” “今晚你数多了呀。” “是奉送给我们的吗?” 于是,幽灵凄凉的一笑说:“是,实际上我感冒了,所以明天休息。” |
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