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【日本の昔話】「​幸運を招く猫」

 日知窗 2020-10-05
幸運を招く猫
今より四百年ほどもむかしです。 
ある寺に、天極秀道(てんごくしゅうどう)というお坊さんが住んでいました。 
文字どおりの破れ寺で、屋根はすっかり傾き、くずれた土塀の穴から中がまる見えでした。 
それでも秀道はまったく気にもかけず、この寺に迷い込んだ一匹の猫と、のんびり暮らしていました。 
ある年の春、秀道は寺の緑側に座って、日向ぼっこをしていました。
膝の上の猫の頭をなでながら、なにげなく独り言です。
「猫の子ほども役立たず、ということがあるけれど、わしはまるで役立たずの人間だわい。お前は幸いにも無事に育つことができた。まずしくとも、食べる心配はなかろう。どうだな、このあたりでチットは、役に立つ猫になっては」 
そのとたん、猫は膝からピョンととびおり、「ニャーオ」と鳴きました。
「おや、怒ったのかい? 気にするな。いまのは冗談。お前は役立たずでけっこう」 
秀道はふたたび猫を抱いて膝の上にのせ、一日中猫といっしょに居眠りをしていました。 
そんな独り言もすっかり忘れてしまったある日のこと、表の方から、賑やかな馬のの音が聞こえてきました。 
めったに人の尋ねてこない寺です。 
秀道がなにごとかと庭(にわ)に出てみたら、七、八人の狩装束(かりしょうぞく)をつけた侍が、次つぎと馬を下りて、境内(けいだい)に入ってきました。「なにかごようかな?」 
秀道が不思議に思って声をかけると、その中の主人らしい侍が、ていねいに頭を下げて。
「わしは彦根城主の井伊直孝(いいなおたか)と申す。この地方を新しく将軍さまから拝領することになったので、遠乗りついでに土地を見にきた。たまたま寺の前を通りかかると、猫がさかんに手招きをするので、つい、立ちよったまでじゃ」
「それはそれは。こんな破れ寺に、よく立ちよってくださいました。わたしはこの寺の住職で天極秀道と言います。ごらんの通りの貧乏暮らしで、なにもさしあげるものはございませんが、せめてお茶なりともいっぷく」 
秀道は一行を居間に案内して、お茶の用意を始めました。 
すると、急に空がくもりだし、激しい雷鳴とともに滝のような雨が降ってきました。 
この寺に立ちよらなければ、いまごろずぶ濡れになっていたところです。 
直孝(なおたか)はひどく喜んで、「いやあ、助かった。あの猫に招かれたおかげで、運よく雨やどりができた。これもなにかのめぐり合わせであろう」と、言いました。
恐れいります。役立たずの猫にしては上出来。どうぞ雨があがりますまで、ゆっくりしていってください」 
城主であっても、まるで威張ったところのない直孝の態度に、秀道はすっかり感心して、心からもてなしました。 
直孝のほうも、貧乏寺の住職とは思えない秀道の人柄(ひとがら)にほれこみました。 
やがて雨もあがり、直孝の一行は、晴ればれとした気分で寺を出ていきました。 
秀道は、すぐに猫を抱きあげ、「人助けをするとは、たいしたやつ。おかげでわしも、久しぶりにりっぱな人と話すことができたぞ」「ニャー」 
猫はうれしそうに、秀道の胸に顔を埋めました。 このことがきっかけで、直孝は遠乗りの時は、いつもこの寺を尋ねるようになり、秀道は直孝のために、仏の道についてのあれこれを語って聞かせました。 
そのすぐれた知識に直孝は、「これぞ、まことの高僧である」と、言って、この寺を井伊家の菩提寺(ぼだいじ)とすることにしたのです。 
こうして、いままでは荒れるに任せていた寺は、井伊家によって改築され、各地から次々と修行僧も集まり、寺はいよいよ栄えていきました。 
さて、その猫は、寺がりっぱになってまもなく死んでしまいました。
秀道は猫のために石碑(せきひ)をたて、命日には必ずおとずれたと言います。 
直孝も、猫のことが忘れられず、「あの猫は、観音菩薩の化身(けしん→仏が、人間や動物の姿に変身したもの)に違いない。わしは、猫に招かれたおかげで、そなたに会い、仏の道のすばらしさを学び、寺を復興させる喜びまで与えてもらった。どうだろう。招き観音として、本堂のそばにまつってあげては」
「猫にとっても、わたしにとっても、この上なくありがたいおことばです」 
秀道は、すぐに本堂のそばに新しく猫をまつりました。 すると、この話がたちまち広まり、「幸運を招く猫」として、お参りにくる人がふえたということです。


土塀:土墙,泥墙。
気にもかけず:不放在心上,不介意。
迷い込む:闯进,误入。
のんびり:悠闲自在;无拘无束。
緑側:
日向ぼっこ:(寒冷时)晒太阳,晒暖儿。
なにげなく:不形于色,假装没事;无意。
チット:仅;稍微。
とたん:刚一……就。
気にする:在意。
居眠り:瞌睡,打盹儿。
蹄:蹄子。
装束:装束。
境内:(神社,庙宇的)院内,院落。
拝領:拜领,领受。
遠乗り:乘(车)远行。
ついでに:顺便;顺手。
立ちよる:靠近,走进;顺便到。
せめて哪怕是……(也好);至少。
居間:起居间。
ずぶ濡れ:全身湿透。
めぐり合わせ:机缘,命运。
恐れいる:真对不起;实在不好意思。
上出来:做得很好。
感心:钦佩,佩服;赞成。
もてなし:接待;款待。
人柄:人品,品质;人品好。
ほれこむ:恋慕,迷恋;看上。
晴ればれ:轻松,愉快;明朗。
改築:重建;改建。
命日:忌辰。
化身:化身;神佛。


          带来好运的猫
距今400年前。有一个庙里住着一个叫天极秀道的和尚。
庙是个名副其实的破庙,房顶完全倾斜,从倒塌的土墙缝隙可以清楚的看到里面。
尽管如此,秀道却满不在乎,和一只误闯到这里的猫悠闲的过日子。
有一年的春天,秀道在庙的走廊里坐着晒太阳。
他一边抚摸着猫的头,一边很随意的自言自语:
  “有人说‘像猫仔那样没用’,我已经是一个毫无用处的人了。你很幸运能健康的成长。即使穷,也没让你缺吃的。怎么样,你在这儿成一个有点儿用的猫如何?”
话没有落地,猫轻盈的蹦了下去,“喵!”的叫了一声。
“哎呀,生气了?别在乎,我在开玩笑,你没用就没用吧。
秀道再次把猫抱到膝盖上,和猫一起打了一天瞌睡。
过了几天,他早把他自言自语的话忘了。这天,从门前传来了喧闹的马蹄声。
这座庙很少有人来。
秀道出了院子,看看谁来了,来的是七八个穿着打猎服装的武士,他们相继下了马,进了院内。
“各位有什么事情么?”秀道有些奇怪的问道。
其中一武士好像是一行人的主人,很礼貌的低头说:“我乃彦根(现在的滋贺县)城主,名叫井伊直孝。将军新封我管理此城,骑马远行顺便到此看看领地。碰巧路过此庙时,一只猫频频向我等招手,不觉随之到此。”
“原来如此,没落寒庙,城主光临荣幸之至。鄙人是此庙的住持天极秀道。如您所见,日子贫寒,别无它物,来杯粗茶如何?”
秀道把一行人让到起居室,开始备茶。
此时,突然阴云密布,隆隆雷声后下起了倾盆大雨。
如果一行人不到庙里,现在一定会全身湿透。
直孝非常高兴:“太好了,多亏那只猫招我们进来,我们才能幸运地到此避雨,这也算是机缘吧。”
“不胜惶恐,不中用的猫竟然做出这等好事。请在此安坐至雨停吧。”
虽然是城主,却非常谦恭,秀道也非常钦佩,倾情款待。
直孝也对不像贫寒寺庙住持的秀道的人品非常赞赏。
雨终于停了,直孝一行愉快的离开了寺庙。
秀道立刻抱起猫:“你能帮助人,真了不起!托你的福,我也事隔好久又和杰出的人物聊了天。”
“喵!”猫好像很高兴,把头躲到了秀道的胸里。
自此,直孝每次远行都会到此庙拜访,秀道也为直孝讲了很多佛经。
了解了秀道的博学,直孝说:“这才是真正的高憎”把这座庙当作了井伊家族的菩提寺(一家代代供奉的寺庙)。
这样,一直荒废的寺庙也被井伊家族重修各地修行憎人相继来此,寺庙开始繁荣起来。
那只猫在寺庙成名之后不久死掉了。
秀道为这只猫立了石碑,据说每年的忌日都要来上坟。
直孝也没有忘记这只猫,“那只猫一定是观音菩萨的化身。我因为猫的招引,才与您相识,了解了佛理的真谛,体验到了复兴寺庙的喜悦。我想把这只猫当作‘招引观音’,供奉于正殿之侧,不知您意下如何?”
秀道说:“不管是对猫还是对我,都是无上之幸。”
之后,秀道在正殿侧面重新供奉了猫。
这样,这件事情很快被传开,作为“带来好运的猫”,有很多人来此参拜它。
 

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