大腸?小腸大腸がん大腸について
結腸の役割は小腸より液状となって送られてきた内容物から水分を吸収して糞便にして直腸に送ることです。直腸の役割は糞便の貯留による排便の‘がまん’と肛門からの排便です。 大腸がんとは大腸がんは大腸粘膜から発生します。なかには良性腫瘍であるポリープが増殖していく過程でがん化し大腸がんとなるものもあります。また大腸がんのほとんどが分化型腺がんという組織型です。 良性腫瘍であるポリープは内視鏡(大腸カメラ)で切除できます。またポリープの一部ががん化した早期の大腸がんであってもそのほとんどは内視鏡で切除できます。しかしポリープや早期大腸がんの時期には無症状なので、これらをみつけて早期に治療するためには定期的な便潜血検査(肉眼ではわからない便中の血液を見つける検査)が必要です。 この時期を過ぎると徐々に進行がんとなり、血便、便秘、便秘と下痢の繰り返し、便柱が細くなるといった症状がでてきます。さらに進行すると腸閉塞による腹痛、貧血、体重減少、おなかにしこりを触れるといった症状がでます。 大腸がんの進行度判定について
大腸がんの病期分類がんの進行度の大小を病期(ステージ)で分類します。これはがんの壁深達度、リンパ節転移の有無、肝臓や肺への血行性転移の有無、腹膜転移の有無によりステージ0、I、II、III、IVに分類されます。 例えば、壁深達度が粘膜層の早期がんならステージ0、血行性転移や腹膜転移のある進行がんならステージIVとなります。そしてこの病期に基づいて治療法が選択され、生命予後が予測されます。 大腸がんの治療大腸がんは抗ガン剤や放射線があまり効かないので、治療の中心は手術治療です。 結腸がんでは十分な腸管切除と所属リンパ節の郭清が行われます。術後の機能障害が少ないからです。がんの占居部位により切除範囲が異なります。
また内視鏡では切除できない早期がんと、がんの壁深達度が漿膜下層までの進行癌であれば腹腔鏡を用いた手術が可能です(後述)。 直腸がんの手術には自然肛門が温存される直腸切除術と直腸と肛門を一緒に切除して人工肛門となる直腸切断術があります。これら2つの手術は癌の部位と進行度で選択されます。
また肛門管におよぶがんでも進行度の軽いものでは肛門からの剥離操作で自然肛門温存が可能です(経肛門腹式直腸切除術)。
腹腔鏡手術
しかし適応には制約があります。すなわち大きな腫瘍(例えば骨盤腔を占居する直腸がん)、過去に開腹手術をした患者様や心?肺合併症のある患者様には適応とならない場合があります。 この手術は4-5箇所の小さな開腹創(1-2cm)からカメラや鉗子を挿入し、モニターをみながら行います。この手術の利点は従来の開腹手術より出血が少なく、手術後の痛みも少ないため短期入院ですむことです。しかし手術時間は開腹手術に比べ1-2時間長くなります。また腹腔鏡で手術を開始したとしても腫瘍の状況や予期せぬ臓器損傷、出血などにより開腹手術へ移行する場合があります。 手術術式と症例数当科における2015年の大腸がんに対する手術術式と症例数を以下に示します。
術後合併症縫合不全大腸がんの手術では腸同士を縫合しますが、この縫合部から腸内容が漏れ出すのが縫合不全です。縫合不全のほとんどは絶食で治りますが炎症が強い場合や難治の場合には一時的に人工肛門が必要となります。当科における縫合不全の発生率は4%です。 出血手術中の出血量は一般に早期がんより進行がんで、また結腸がんより直腸がんで多くなります。手術終了前に念入りに止血は確認しますが、それでも手術後に再出血する場合があります。出血量が多い場合、輸血が必要となります。輸血しても出血が続く場合、再手術して止血が必要となることもあります。術前に輸血準備の必要性と輸血の副作用の説明を行ったうえで輸血の同意書を頂きます。万一、宗教的な理由等で輸血を拒否される場合には担当医に申し出てください。 感染感染防止を目的として手術中は創部の感染を防止する装具を使用し、手術開始直後より抗生物質の点滴を行っています。しかし、大腸の手術は細菌に富む糞便のために他の消化管手術に比べ感染が多くなります。腹腔内の感染や創部の感染が起こる事がありますが多くは抗生物質などによる治療で軽快します。当科における術後の感染の発生は8%です。 癒着性腸閉塞開腹手術後には腸と腹壁あるいは腸同士に癒着が起こります。この癒着によって腸閉塞となり、腹痛、腹部膨満感、吐気、嘔吐や排便?排ガスがなくなるといった症状がでることがあります。このような症状が出た場合には入院治療を要することがありますのでいつでも来院してください。 骨盤神経障害直腸がんの場合、腫瘍が骨盤内にあるため手術の際には排尿?性機能に関連した神経の損傷の可能性があります。これは男性に多くみられ、症状としては残尿感、尿意がわからない、尿意切迫や勃起不全、射精能の低下です。症状によっては術後に泌尿器科の診察をうけて頂くことがあります。 入院後手術前に担当医より手術方法や手術の合併症についての詳しい説明があります。ご家族の方と一緒に説明を聞いて頂きます。 術後経過手術当日はベッド上安静となります。翌日より肺炎などの呼吸器系合併症の予防および腸管運動の回復のために離床を促しています。 鼻から胃管チューブが入っていますが腸管運動を認め排ガスがあれば抜去し飲水していただきます。飲水して問題がなければ食事が開始されます。最初はおも湯や流動食ですが、1週間程度で5分粥の摂取が可能となります。食事が十分摂れるようになれば点滴は抜去します。 術後創部の消毒は術後1回程度で、創部感染がなければ1週間程で抜糸します。腹腔内にドレーン(管)が入っている場合、出血や感染や縫合不全がなければ5-7日程度で抜去します。術後合併症がなければ約10-14日で退院となります。
手術後の補助療法病期の進んでいるがんには手術後のがん再発予防のために抗ガン剤を投与します。これが補助療法です。補助療法のメニューは病期、年齢、全身状態などを考慮して選択されます。補助療法については術後に担当医よりご説明致します。 外来での経過観察退院後は全身状態や抗ガン剤の副作用やがん再発のチェックのために外来通院が必要です。退院時に次回の外来受診の日取りを決め予約票をお渡しします。それ以降の予約は外来担当医がお取りします。退院後初めの3ヵ月は1ヵ月毎に診察がありますが、3ヵ月目以降は3ヵ月毎、1年目以降は6ヵ月毎、3年目以降は1年毎となり、術後5年間は外来通院して頂きます。 がん再発の治療外来での経過観察中に再発を認めた場合には治療を必要とします。外来治療と入院治療があり、また腫瘍内科医とともに治療する場合もあります。 大腸がんの治療成績
切除不能大腸がんの治療腫瘍内科と共同して集学的治療を行っています。例えば、まず腫瘍内科で化学療法を行い肝臓の転移巣や局所進展した大腸癌を縮小させてから手術治療を行います。 セカンドオピニオンについて当科では患者様にとって最良の治療法をご本人およびご家族の方々と一緒に選択していきます。病気についての十分なインフォームドコンセント(情報提供)を行っておりますが、十分理解できなかったり、疑問のある場合は、遠慮なく私達にお尋ねください。また、他の病院の先生方の意見を聞いてみたい場合(セカンドオピニオン)につきましても、資料を提供致します。疑問点や困ったことがありましたら、何なりとご相談ください。 下部消化管グループでは奥野教授、肥田准教授以下8名の医師が月~土まで外来を担当しており、病棟ではチーム医療を心がけております。あなたの担当医でなくても病状は把握していますのでご質問があればいつでも遠慮なく声をお掛けください。 (文責:肥田 仁一、上田 和毅) |
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